ウールの藍染
紺邑を始めた頃、池袋三越の元売りに行った事があります。
そこは、藍染をなさる方が、沢山出展なさっていたらしい。
担当の女性が、「ウールの藍染を見たことないの。染めてと頼んでも、薄い色の毛糸は染まっても、セーターに編めないの。あなた出来る?」っておっしゃる。
そんなことは、昔から普通にやっていたことなので、「次回、お持ちいたしましょう」と約束。
写真は、出来上がったウールのセーターです。
そこでの、「そうか!暖かい藍染をやろう」という気付きが、様々なウールの藍染のある、今の紺邑のきっかけとなりました。
その担当の女性には、感謝をしております。
セーターは毛糸を手に入れれば出来る。
しかし、他はどうしたら生地が手にはいるだろうと考えたら、高校の同級生に、ウールの機屋(ハタヤ)がいるではないか。
彼に頼んだら、アンゴラ、アルパカ、リャマなど、様々な布を織ってくれた。
それらを初めて染めたときの発色の良さは、今でも忘れられません。
直ぐにその男のところに持って行って見せ、ともに感動した次第。
写真の商品は、アルパカ・リャマ・モヘアのケープです。
様々にウールの製品が出来、名古屋の丸善でそれを販売したとき、「なんでウールに藍染が染まるのか?」と聞くお客様がいた。
名詞を見ると、ウールマークを付ける検査技師。
この方は、今の藍染をよくご存じだからこその、質問だった。
藍の液は、強アルカリ性です。
pHを計れば、11~12はあるでしょう。
ウールは、合成染料でも、PH8までの液でしか染めることが出来ない。
つまり、アルカリ性の液に弱い。
中性洗剤で洗濯をしなければならないのは、そんな理由があります。
同じ動物性タンパク質の繊維でも、長繊維の絹は非常に強い。
だから、絹の藍染は出来るわけです。
私は「何で?と言われても、理由は分りません。ただ言えることは、紺邑は、藍を木灰の灰汁で建て、石灰も使っていない。そういう藍染は、結果としてウールに染まるとしか、言えません。ただの職人ですからね」と申し上げた。
その技師は、「なるほど、その通りですね。理由はともかく、結果として染まっている。科学は結果の後追いだとも言えるでしょうね」と納得された様子。
何故、今の藍染がウールを染められないかと言うと、苛性ソーダや還元剤を使うからです。
そういう化学建ても、「藍染」には違いありませんが、紺邑の藍染は、それらと区別するために「正藍染」と言っているのです。
染織の雑誌で、「藍染のウールの染め方」と言うを読んだことがある。
どこかの大学の染織科の先生が書いていたと記憶していますが、温度がどうの、PHがどうのと大変そう。
正藍染によるウールの染めは、綿を染めるのと、何ら変わりがありません。
そのために何かをするなどと言うことはない。
しかし、染め方はある。
それが、職人の技というものだと、勝手に思っております。
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