ストローハット
岡山の帽子屋の石田昌司(まさし)君
四人兄弟の末っ子で新婚さん。
兄弟全員で帽子を作っている。
その中でも自他共に認める第一人者は、この末っ子の昌司君です。
若き名人。
石田製帽という会社を私に紹介したのは武田刃物で、あいつは同じ岡山県人として、石田達を弟のように思っているらしい。
ちょいと事情があって仕事を沢山しなくてはならない。
そこで、大川さん何とかしろってなことでしょう。
最初に出展した職人展が、宇都宮東武百貨店。
成績は目も当てられないくらいでしたが、そこから彼らの精進が始まった。
製品を見直し、営業に励み、展示方法を変え、売り方も変化し、気がづいたら他の追随を許さない程になって来ています。
特に大きな変化は、日本橋三越本店に出展したこと。
信じられないほど高単価なものが売れることに気づいた。
そこから彼らの作る製品の質が大きく変わりました。
ある程度売れるようになって、最初に惨敗した宇都宮で、復讐戦をやりたいと言い出した。
そこで何年かぶりに出展してみたら、やはりそれ相応の成績を上げましたから、努力は無駄ではありませんでしたね。
ところで昌司君は、売場でも一日中ミシンを踏んでいます。
岩渕さんや田中さんと同じで、お仕事をしているのです。
彼の踏むミシンの音は実に柔らかく、手つきも素晴らしくなめらかで美しい。
「君は違うね」といえば、「そりゃーそうですよ」とあっけらかんと答えます。
彼の評価は、本当は日本よりもヨーロッパで高いそうな。
様々な国から招待されているらしいのですが、行ったのはただ一度のフランスだけ。
後はみな断わっているらしい。
理由は簡単で、飛行機に揺られ、たばこが吸えない十数時間が耐えられないのです。
そんな彼でも、何故か結婚できた。
その奇特な奥様と、彼の作品群です。
奥様はここの人(本当は滋賀)。
百貨店に出展していたときの担当だったそうで、昌司君もなかなか隅に置けません。
ブログに書くよと言ったら、側にいた奥様にこの野郎は臆面もなく、「ねぇ、ニャーニャー、大川さんがブログに書くって」とぬかしやがった。
「ニャーニャーだとぉ!」と私が怒ると、今度はそのニャーニャーが、「この人を何と呼んでいるか知ってます?」と言ってから、ちょっと間をおいて、「マーシー」だってさ。
新婚にはかないません。
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