「正藍染」と「本藍染」
ちょいと用がありまして、ネットで調べ物をしておりましたら、「正藍染」と「本藍染」という言葉が出て参りました。私もこのブログで、「正藍染」について説明させていただいてもいる。それにしても、私のを含めて、様々な説明があるものです。「うちの藍染は天然藍を80%使用している正藍染です」なんていう説明にも出会った。
「正藍染」と言う言葉は、柳宗悦の著書「手仕事の日本」でも紹介されております。
この本には、日本の民工芸の、戦前の実情が良く表されております。ご興味のある方は、読んでみては如何でしょうか。
戦後はどうなっているかと言えば、もっと酷くなっていると読んでいただいて結構だと思います。もちろん、藍染についてもです。
最近、インターネットや新聞記事で紺邑をお知りになった方々から、電話を良く頂戴いたします。それによりますと、藍染について大分混乱が見られる。
「正藍染と本藍染ってどう違うんですか?」とか、「色々なお話しがあって、どれがどれやらさっぱり分かりません」なんていう声もある。
インターネット上の「藍」と「藍建て」と「藍染」の説明を読んだ私の実感を申し上げると、染める方も売る方も、良くご存じないのではないかと思える。だから、買う方は、余計に混乱するのではないか。
「正藍染」とは簡単なことで、「すくも」を「灰汁(あく)」で醗酵させる、伝統的な藍建て(本建て)による「藍染」の事を言います。
「すくも」を使わなければ、正藍染ではありません。
「灰汁(あく)」で建てて(醗酵させて)いなければ、正藍染ではありません。
苛性ソーダなどは使いませんし、ハイドロサルファイトや亜鉛末などの人工的な還元剤や、水飴やブドウ糖などのグルコースの入ったものも一切使いません。もちろん、灰汁で建てた後の維持管理も同じです。「本建て」が出来たところで、維持できなければ、建てたことにはなりません。建てた後で苛性ソーダや還元剤を使い、「正藍染」だと言っては、やはり嘘になるでしょう。
しかし、方法は一つではない。私(紺邑)のやり方と違うからと言って、「正藍染」ではないなどという、おこがましい意見は、私は持っておりません。
日本で唯一の人間国宝・千葉あやのさんは、「正藍染」として指定されていますが、その染め方を「正藍冷染」といって、私のやり方とは違います。
では、「本藍染」とは何か。これは、私の知る限りですが、最近の言葉です。
それが「本染め」の事なら、「本建て」でなくてはなりませんが、そんな意味はないのではないかと、経験上、私は思います。
たぶん、「すくも」または、いわゆる「天然染料」として市販されている「藍」を使って染めている物を言うのではないでしょうか。還元剤を使っても、原料が藍草由来の天然だから「本藍染」と言っているように、私には見える。
つまり、原料が問題であって、建て方を問題にしていない。いや、原料の質も、問題にされない。
あまり詳しく書きますと、藍染をしている人や、売っているお店の営業妨害になるかもしれないので、これくらいにしておきますが、紺邑にいらっしゃれば、全てお話しさせていただきます。
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