褐色(かちいろ)
黒に見えるほど濃い紺色のことを、「褐色(かちいろ)」といいます。
JR大阪三越伊勢丹の「NIPPONの匠」に来て下さった徳島県の方が、この「褐色(かちいろ)」だというシャツを着ていらっしゃいましたが、私にはとても藍染とは思えない色でした。もちろん「褐色」を知らなかったわけではありませんが、阿波藍を使って出す色ではないだろうとは思っていました。
褐(かち)は勝に通ずで、勝色とも書きますが、勝虫(とんぼのこと)同様、武士に好まれた色なのでしょう。実質的な理由もあって、藍染めは重ねて染めれば染めるほど青味が濃くなり、糸や布を丈夫にしますので、鎧を繋ぐ糸に使われたのが褐色だったのではないか。実際、鎧を作っている人から、「褐色で絹糸を染められますか」と頼まれたこともあります。
搗色(かちいろ)とも書きます。搗は「つく」と読むように、褐色に染める糸や布に光沢を出すために、それらを臼に入れ、杵で突きながら染めた。それを搗染(かちぞめ)といって、播州飾磨が良く知られていました(播州飾磨とは、現在の兵庫県姫路市飾磨)。
後白河法皇が編まれた「梁塵秘抄」の中に、「いかで麿 播磨の守の童して 飾麿に染むる搗(かち)の衣着む」とあります。
江戸時代に書かれた百科事典のような「守貞漫稿」の19巻は、染め織りについて書かれていますが、そこに「カチン色」として「(前略)又播州飾磨ノ里ニテ藍ノ濃染ヲカチ色ニスル也 カチ勝ヲ仮用シ祝シテ古ハ軍陣ニ之用 今ハ婚礼ニ用」云々とある。
さて、褐色(かちいろ)は如何なる色合いか。江戸時代後期の国学者斎藤彦麻呂が「神代余波」で、「紺に染て臼にてつき又そめて、?(つ)きいくたびもいくたびもしかれば黒くなりて赤き光り出る物なり(紺に染め、臼に入れてつき、それを何度も何度も繰り返して黒くなり、赤き光りが出た物)」と書いております。
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