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2017年11月23日 (木)

「染め液の手入れ」そして 「答え」

 かれこれ十何年も前、藍染について「答えがあると思ってはいけない」と、ある人に云ったことがあります。微生物というのは、「答えを見つけた」と思っても、必ず裏切るからです。それが、醗酵の難しさだと私は思う。

 例えば、灰汁やふすまや貝灰の使い方は、その時々で違う。ある時、私が貝灰を5kgほど足したら染液の調子が良くなった。しかし、これは答えではないのです。その時に、藍が何をどれくらい求めているかを、私が感じていたと云うだけのこと。この「感じる」という気付きは、修行によるのです。これを「勘」といっても良いかもしれません。勘は養うものですから修行が要る。

 答えを求めると、勘は養えません。調子が良くない時に貝灰を5kg入れることを「答え」としてしまうから、5kg入れれば良いと結論付けてしまう。
 しかし、それでも調子が戻らない時がある。それは、染液が別のものを欲しているからです。それを感じ取らなければなりません。
 
 感じ取れなくなるのは、答えがあると思っているからですが、答えがある世界もある。それが、化学です。石灰や苛性ソーダでpHを調整し、染液の量に対して還元剤の量を決める。これは、必ず答え通りになります。考える必要がありませんから、楽です。

 楽をおぼえると、それから抜け出せないのが人間です。それは私の短い67年の人生経験が教えてくれること。ですから、化学建てから本建てに移行するのは、別の修行が要ります。しかし、楽をおぼえると、その修行もできません。

 ある日、私の工房に藍染の世界では著名な方がお見えになった。ドアを入った途端、首をかしげたので、「匂いだな」と直ぐに解かりました。私の工房には、いわゆる藍染の独特の匂いというものがありませんから。
 藍の染液をお見せすると、「これは建ってないね」とおっしゃった。つまり、色が出ていないということです。染液の表面に、藍の華どころか、泡一粒もなかったからでしょう。布を染めて、色があることをお見せしました。

Ai_someeki                         藍の華がない本染めの藍甕

 灰と灰汁もお見せして、私の藍建てと藍染のすべてをお伝えしました。するとその方は、「そんなに私に教えて良いのか」と尋ねましたが、正しいやり方が伝わるなら良いに決まっています。

 それから10年は経ちますが、その方が本建て本染めをしているという話は全く伝わってきません。私はそうなるだろうと思っていました。なぜなら、彼は楽をおぼえた人ですから。

 私が「答えがあると思ってはいけない」と云った人も、同じです。

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