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2018年3月12日 (月)

分かるという事 感じる力(本染めを目指す人たちへ)

(2008年11月に書いた記事を一つにまとめ、書き足しています)

 物の良し悪しを、現代は分析をして計って決める。しかし、分析しても分からないことの方が多いのではないか。人間の心なんかもそうでしょう。
 
 分からないことはあってはならないと、現代は考えるようです。元厚生事務次官夫妻を殺害した人間も、何でそんなことをしたか、その理由が分からなくてはならないらしい。そんなことが分からなくて、何の差し障りがあるというのか。 
 もちろん、その理由も大切なことだろうけれど、もっと大切なことは、彼が人殺しだという事実でしょう。事実よりも、理由が大切だなんて事があるのでしょうか。
 
 藍染も同じです。ウールが綿と同じように染まろうが、青い美しい藍染が染まろうが、そんなことは、私の想像力と心の為す事であって、私がその理由を知っていたわけではありません。
 
 分からないなんて事は、たいしたことじゃない。
 だから、分かるなんて事も、たいしたことじゃない。
 
  
 藍染をしておりますと、藍が「日本人は、人間の理解を超えたものの存在を感じ取る能力を持っていたのではないか」と、私に語り掛けて来ます。日本人は「分からないこと」を許容することが出来たのではないだろうか。というよりも、感じ取ろうとしてきたと言った方がよいかも知れません。
 
 藍は水に溶けません。水に溶かさなければ染ものになりませんから、世界中、様々な方法で藍を水に溶かしています。
 
 日本の藍染の原料を「すくも」と言います。藍草の葉を乾燥させて粉々にし、水はけの良い土間に積み、水を打ち、むしろを被せて寝かせ、数日経ったらむしろを剥いでまた水を打って切り返し、また寝かせ、その工程を十何回も繰り返し、100日程かけて堆肥のように醗酵させた物です。
 
 藍の含有量は、3~4%くらいと言われています。それを灰汁でまた醗酵させて、藍を水に溶けるようにすると藍染が出来るようになる。
 
 この方法は、室町時代に確立されたようです。
 
 こう書いて説明したところで、昔の人は、「醗酵」という言葉を知っていたから「醗酵」という手段を用いたはずはありません。何故藍染が出来るのだろうかと、分析してわかったわけでもない。pH、アルカリ、還元などという言葉も知らなかったし苛性ソーダもソーダ灰もなかった(石灰も盛んに取られるようになったのは明治以降です)。しかし、感じることは出来たから、「すくも」を作り、保存できる様にして、一年中藍染が出来るようになったのではないかと、伝統の藍は語ってきます。 
 
 日本人は、自然という物と語り合い、または溶け合って生きてきたから、感じる力を持つ。一方、自然を自分と対立する一つの物と考える西欧文明は、分析して分かろうとする。そう云えるのではないか。
 
 
 産業革命は、18世紀の初め、石炭からコークスを取り出すことによりエネルギー効率が上がり、鉄をより効率的に溶かせるようになり、急速に発展しました。そうすると、コールタールという副生成物というかゴミのようなものも出来てしまった。この中に何かないかと分析して調べると、インディゴ(藍)が発見され、人類は19世紀の終わりに合成藍(人造藍)を作った。これの藍の含有量は100%ですから、インディゴ・ピュアーと呼ばれます。
 
 藍が水に溶けないのは、藍草も合成藍も同じです。伝統の藍は、醗酵で水に溶けるようにしてきました。しかし、藍草には雑物があるから醗酵しますが、純粋な藍の塊の合成藍には、醗酵する元がありません。
 
 せっかくインディゴを見つけても、水に溶かさなければ染物になりません。そこで藍の染液を分析すると、強アルカリ性で無酸素の状態だとわかった。
 強アルカリ性にするには、苛性ソーダと石灰やソーダ灰を入れれば良い。
 無酸素状態にするには、液から酸素をとってしまえば良いわけで、還元剤を使えばよい。
 
 こうして、藍染が簡単になりました(これを化学建てと言います)。
 
 染液に藍の色が無くなれば、藍(合成藍)を足せばよい。酸素が入ってしまったら、還元剤で酸素を取ればよい。アルカリ性じゃなくなったら、苛性ソーダか石灰を入れてpH調整すれば良い。
 
 こういう藍染になってから、かれこれ百年を超えてしまいました(この方法は、藍草を原料とする染め液の作り方にも用いられ、それが「本藍染」や「天然藍」として染められているのが現在です)。
 
 
 すくもを灰汁で醗酵させて染めた藍染と化学建てで染めた藍染と何が違うのかと云う問題もある。日本人は、その違いも感じる事ができた。
 
 合成藍は色が黒く、落ちるし色移りするし臭い。それまでの日本の藍染は、青く、美しく、色移りしないし臭いもなかった。見た目も違いますが、使い心地も全く違います。
 だから、明治30年頃、合成藍が日本に入ってきたとき、日本人はそれを藍染とみなさず、使わなくなってしまったのです。
 
 それから百年たち、今や分析の時代となりました。そして、感じる力を失いかけているように思います。
 
  
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※追記
写真は、私の工房のアイロン台。霧吹きを使いながら、無地染めの手ぬぐいをアイロンしたところ。白い布に色移りしていません。洗いながらですが、何年も使っています。


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