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2018年5月21日 (月)

「藍染」その本物と偽物という問題と現状

 全国の百貨店を回っておりますと、時折、藍染をなさっている方に出会います。その中には、生葉染めをなさっている方もいらして、いつぞやは、「私は本物の藍染をやっているの。ちゃんと生葉で染めています」とおっしゃった。それで、どうしたら退色しないように出来るかを、専門家の私に聞きにいらしたのです。
 そういう方々は、染色の教室やカルチャーセンターで藍染を習ってくるらしい。それはそれで、楽しみ方の一つなんでしょうけれど、私たちの伝統文化としての藍染と同じだと考えてしまうと間違えます。

 伝統文化というのは、人間の知恵の継承であり、その中には様々な意味が含まれています。生葉をミキサーでなにかした染めには、その知恵はないし、もっと言えば、苛性ソーダを使い、ハイドロなどの還元剤で建てた藍も同じ事です。さらには、インディゴ・ピュアー(人造藍)を藍甕に加える割り建てなども、我々伝統工芸の世界とは全く縁がありません。
 しかし、残念ながら世界中のほとんどの藍染が、そういうものとなって久しいことなのです。  
 
 では、ハイドロサルファイトなどの還元剤を使う化学建てや、合成藍を使う割り建てで染めた藍染は偽物かといえば、決してそうは言えません。 
 何故かと云うと、正藍染の私の染め液も、化学建ての染め液も、合成藍の割建ても、化学的に分析すると同じものだからです。だから、「合成藍は、天然藍と全く同じ物質だ」と、化学者は云いますし、化学的にはその通りなのでしょう。
  
 染め液を作る方法についても、私たち伝統の世界は、蒅(すくも)を木灰から取った灰汁(あく)を使って醗酵させて染め液を作っているわけですが、「醗酵とは、微生物による物質の変化を伴う現象のことで、物質の変化とは化学変化(反応)であり、藍はアルカリ性の液で、発酵か還元作用によって可溶性の物質に変化するのだから、現代は、醗酵という面倒な事の代りに、還元剤という優れて便利なものを人類は発明し、石炭からの人造藍の発見により、簡単に藍染めが出来るようになって大量生産が出来るようになった」と、これまた化学反応式を持ち出して化学者は説明する。ですから化学的には、化学建てで染めた藍染めも、合成藍を使った藍染も、同じ藍染であって偽物ではありません。
  
 では、これらが正藍染と何が違うかと云えば、色と性質と本質(意味・存在理由)が違います。つまり、結果が違うのです。私が「化学藍は偽物ではないが、正藍染めとは似て非なる物」と云う理由はそこにあるのです(このお話は別の機会に致します)。
   
 この問題は植物から色を取る染め、所謂「草木染め」にも及んでいる。つまり、植物からの色の取り方、染め方、そして色の出し方(つまり媒染剤)などの問題があるのです。
 例えば媒染剤は、古来、灰の灰汁を使っていた。今は、灰がありませんから、それを金属でまかなっている。金属は分解しませんから、河川を汚など自然環境を壊す。原料は自然の物かも知れませんが、現在の植物をつかった染めも藍染めも、その工程に問題があるのです。
  
【黄八丈の事】
  
 日本の植物を使った代表的な染めに、黄八丈があります。黄八丈の特徴は、島の中で原料から仕上がりまで、全てまかなうことが出来るところにあります。 
  
 染めの原料は、イネ科の一年草のコブナクサ(刈安 カリヤス)を乾燥したものを使います。これを束にして朝から晩まで煎じるのです。
 
 こうして得られた煎汁を「フシ」と呼び、この煎汁に漬け込んで染めることを「フシヅケ」と呼びます。淡い煎汁に回数を多くつけた方が渋みがのり、染め上がりが美しいと云われています。
  

 一綛(わな)づつ糸を軽くねじり、染め桶の中に一列に並べ、熱い煎汁を平均にかけ、よく染みわたらせます。
 
 糸の量が多ければ、さらに積み重ね、糸が浸る程度に煎汁をかけ、上部を布で覆い、糸が直接空気に触れないようにして、そのまま翌日まで漬け込みます。
 
 翌朝取り出した糸は、よく絞って屋外の干場で竿にかけて夕方まで乾燥させます。乾燥中は幾度もたたき、糸が一本一本ほくれるようにします。
 
 夕方、完全に乾燥したら、前日と同じ方法で新しい煎汁に漬け込みます。乾燥が不十分だと、糸に染めむらができるので、雨や曇りの日はいけません。
 
 このような「煎汁づけ」を、15回から20回繰り返したあと、灰汁づけ(アクヅケ)を行います。
 
 灰汁づけに使用する灰は、ツバキとヒサカキ(八丈島ではサカキという)の焼き葉です。小枝のまま切り混ぜて燃焼すると、白く美しい極めてこまかい粒子の灰ができます。
 
 この灰を、湿気を吸収しないように貯蔵して置きます。
 
 灰汁はかめに灰を入れ、水を張って、1週間以上静置したときにできる上澄みを手桶にすくい取っておきます。
 
 次にそれをたらいのようなものに少量ずつ移し、糸に手早く染み込ませます。すると、糸に染み込んだ煎汁が、灰汁の力で鮮やかな黄色を発色するのです。この灰汁づけは一回だけ。黄色の良し悪しは、このたった一回の灰汁づけによって決まるといいます。
 
 灰汁づけが終わった糸は、しばらくそのまま寝かせてから、強く絞って天日で乾燥させます。
 
 如何でしょうか。大変手間が掛かるものですが、植物から染料を取る染めは、すべからくこうあるべきだと、勘が私に語りかけて来てはいましたが、この黄八丈の染め方を知り、実に納得しました。
  
 
 草木染めは染色堅牢度が弱いから、着物や帯びに向かないという人がいますが、それは、今時の草木染めの事です。染め物は、直ぐに色が褪せるようでは、人は着ることもしないし使いもしません。色が汚ければ尚更です。だからこそ、作り手は工夫し、それが知恵として伝わってきた。
  
 最近は、「私もカリヤス(黄八丈の原料)で染めているの」という人がいると聞きます。それはそれですが、伝統と人間の知恵が生かされてきた色と、媒染剤を使って簡単に染めた色の区別が、今の人達には出来ないのです。
  
 藍染めも、同じ「すくも」を使ってはいても、灰汁で醗酵させたものと、苛性ソーダや石灰やソーダ灰を使って発酵させたものとでは、色も染色堅牢度も違うし、ましてやハイドロなどの還元剤で建てれば尚更ですし、原料が違えばさらに尚更です。

2012年8月5日

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