染め液の維持管理とpHについてなど
私の所には、海外からも全国からも藍染めをなさっている方がいらっしゃいます。そう言う方々から様々な情報を頂いて、藍染めの世界の今が見えるようになりました。このインターネットの世界もまた、藍染の現状を教えてくれています。
思う事は色々ある。だから、書いているわけですが、藍建てについていうと、どうも余計なことをやり過ぎているのではないかと思えるのです。
例えば「灰汁醗酵建て」という染め液の作り方があるそうですが、それを見ると、藍建ての時に、灰汁は使うけれど、日本酒やふすまを入れ、その上に石灰をいれて強アルカリ性にして藍建てをしているようです。しかしこれは、醗酵するかもしれないけれど、灰汁の力ではなく、その他の有機物と石灰の力で醗酵させているので、たぶん、直ぐに醗酵が止まってしまうだろうと想像できるわけです。だから、維持管理に悩む。「灰汁」は使っているけれど、灰汁の力で建っているわけではないからです。
そういう藍建てを教える人は居るようです。本もある。しかし、維持管理は教えていないようで、最近お見えになる方々は、その悩みを抱えていらっしゃる方ばかりです。それも、遠くからわざわざいらっしゃる。
よくよく聞くと、皆さん、何かの還元剤を使ってしまっている。先日入らした方は蜂蜜を使っていました。蜜はいけません。基本は藍建てと同じく、灰汁です。
まず知るべきは、灰汁は微生物の餌だという事(アルカリ性なのは結果に過ぎません)。藍染めにpHは関係ない事。石灰は餌にならないという事。貝灰も餌ですから微生物がみんな食べてしまいます。ふすまも餌。そう知ると、それらの扱いが出来るようになります。
pHを測って藍建てをして維持管理するのは、醗酵とは無縁です。藍染めは長い歴史を持つけれど、その歴史の中にpHという概念も無ければpHメーターもあるはずがありません。
pHにとらわれると、藍の染め液と語り合うことは出来なくなります。それは子育ても同じ。赤ちゃんがお腹を空かせて泣いているのに、何故泣いているかを測る機械があって、それで計ったらおむつを替えろと答えが出てきたので、おむつを替えたけれど、いっこうに泣き止まないという様なものです。
灰汁は、藍の染め液の命の元です。だから、良い灰汁を使わなくてはなりません。その為には良い灰が必要ですが、良い灰は作るのです。しかし、灰の作り方も伝わっていません。
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