藍の染め液の手入れ
本染め(本来の藍染)の場合、手入れは滅多にしません。建てた時の蒅(すくも)と灰汁と、建てた後に加える麬(ふすま・小麦の皮)と貝灰と少量の澱粉が、微生物の餌になっているからです。
微生物がこれらを食べてしまって、餌が染め液中に少なくなった時に手入れをします。つまり手入れとは、微生物に餌を上げてやることです。
基本は「灰汁」です。灰汁はミネラルの宝庫ですから、それを加える。染め液に入れる液体は、灰汁だけです(建てる時も、灰汁だけで建てます)。再度書きますが、基本は「灰汁」です。
麬(ふすま・小麦の皮)もミネラル分の補給です。これを勘違いする人がほとんどですが、これはミネラルと繊維質であって、澱粉はほとんど含まれていません。
貝灰もミネラルの宝庫。石灰と比較する人がいますが、染め液に入れる目的が全く違います。貝灰は栄養補給。石灰はpH調整です。
これらの何を、いつ、どうやって加えて染め液を維持管理するかというと、経験が教えてくれます。経験するしかないけれど、基本はある。その基本に乗っ取って経験を積み、手入れ方法を覚えるのです。以前、「守破離」のお話しをしましたが、その「守」です。
経験が教えてくれることは、簡単ではありません。修行が要ります。今の日本人は、修行を嫌う。だから、簡単にできるものに飛びつく。また、簡単に出来ることを教えてくれる人も教室もある。そして、本来の物事が消えかかっているのが、今でしょう。
※写真はウールの手編みセーター。
毛糸を濃紺、紺、藍、水色に染め分け、東京の手編みの作家が編んだもの。
日本橋三越本店に出展していた時に持ってきてくださった。
本染めの藍染は、ウールも綿と同じように染まりますが、ウールの色の変化は凄い。これも10年近くになりますが、色が濃くなり、深みが出てきている。それを見た作り手が驚き、私に見せるために持ってきてくださった。という物語のあるセーターです。
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