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2019年6月 3日 (月)

正藍冷染(しょうあいひやしぞめ)の事

(2007年の二つの記事をまとめ、写真を加えて編集したものです)

 藍染めで唯一人間国宝に認定されたのは、宮城県栗駒の千葉あやのさんです。時に昭和30年。その手法を「正藍冷染」といいます。
 藍甕ではなく、木樽に建てるのですが、加温出来ませんから、暖かい時期にしか藍染めが出来ません。それが「冷染」という名の由来なのでしょう。
 
 千葉さんは、型紙以外は、すくも作りから藍建て、染めまで、全部ご自分でなさっていたとのことです。たぶん、あの地域ではそのような藍染が随分盛んであったろうけれども、千葉さんだけが残ったのではないかと想像しております。
 
 その藍建ては、すくもを団子状態にして寝かせ(たぶん、灰汁を使うと思います)、それを樽の底に並べて敷いて灰汁に浸し、ゆっくりと醗酵させる方法だと思いますが、これが実に合理的だと、醗酵の専門家がおっしゃっていた。
 
 私が親父殿から離れ、工房もなく放浪していた2000年、佐野市内の廃屋を工房としました。そこは文字通り廃屋で、荒れ果てておりました。

Photo_98
北側
2_3
南側

 しかし、ありがたいことに、風呂桶と井戸水があったのです。

Photo_99  
中央奥にあるのが風呂桶の藍甕。

 風呂桶を見て、千葉さんの藍建てに思いついた。当時は私には、藍甕もありませんでしたから。
 
 初めてのことなので想像しながらやってみましたが、何とか建った。しかし、そこからが大変。この方法では冬が越せません。千葉さんは藍染で生計を立てていたわけではないそうですから、こういう染めが出来たわけで、私はプロですからこれで食わねばならない。だから、冬も染めなければならない。つまり、温度管理に苦心をいたしました。幸い、今は電気という便利なものがありますから、それを利用した。
 
 最初は、熱帯魚のヒーターを使いましたが、これが蒅(すくも)にやられてすぐに壊れる。安くありませんでしたから、経済的にも困った。そしてたどり着いたのが、キャンプ用のヒーターです。これで助かりました。それでも冬は冷えますから、風呂桶に布団を何重にも着せて、暖を取らせたものです。
 
 そんな思い出もある「正藍冷染」ですが、実は千葉さんの作を見たことがなかった。興味はありますが、機会がなかったのです。
 昨日(2007年11月)、浜松でようやくそれを見ることが出来た。遠鉄百貨店で展示会を開いたとき、昭和30年代に仙台にお住まいになっていたお客様に、千葉あやのさんの型染めのゆかたを見せていただいたのです。ちょうど無形文化財に指定されたときで、仙台から栗駒までバスで行って、千葉さんご本人から買い求めた物だそうです。


Photo_100
写真でお分かりかどうか、実に良い感じです。
現在の単にきれいなだけのものに慣れた方々に理解されるでしょうか?
はなはだ疑問。
2007_11110019

 一見して、「おや!?」っと思った。私がこういう染めをしたら、商品には出来ないなと。技術的に稚拙で仕事が粗い。
 ところがよくよく見ると、てらいのない、純朴な、千葉さんの生活や生き方や心が表れているような気がしてきた。
 
 そこで、技術的な事をちょっとそのお客様に説明しましたら、「そうなのよ。千葉さんはね、『なかなか難しくてね』と言いながら見せて下さったの」とおっしゃる。
 さもありなん!。

 お電話をし、お伺いする約束をして、仙台から何時間もバスに揺られ、山道を行くと、停車場に千葉さんが待っていてくださったとのこと。
 さもありなん!

 このゆかたには、そういう風情が感じられて、実に良いのです。宮城の山奥で、細々と続いてきた物に光を当てるなど、文化財の仕事も捨てた物じゃないと思いました。

 しかし、手入れが良くない。「洗ったことはありますか?」とお聞きすると、「まだ一度も洗っていないの」とおっしゃる。色は縹色ですが、やはり所々に灰汁が浮き出ている。六十年近く経っているこのゆかたも、洗えば(灰汁抜きすれば)良くなる。洗い方をお教しえしましたが、見違えるように青味を増すことでしょう。
 
 それにしても現在の四角四面の世の中で、てらいのない、純朴な千葉さんの作品が、どれほどの評価を受けるだろうかと思うと、ちょっと懸念があります。事実、呉服関係の方々からは、そういうお話しも聞いております。

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